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和歌山地方裁判所 平成5年(わ)549号 判決 1994年4月25日

本籍

和歌山県伊都郡かつらぎ町大字山崎二四番地

住居

右同所

損害保険代理業及び農業

前田昌計

昭和一五年七月二六日生

本籍

和歌山県伊都郡かつらぎ町大字山崎三二番地

住居

右同所

農業

横手昭夫

昭和四年六月一五日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮崎昭出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人前田昌計を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に処する。

被告人横手昭夫を懲役八月及び罰金一〇〇〇万円に処する。

被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。

被告人両名に対し、この裁判の確定した日から三年間、それぞれその懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人前田昌計及び同横手昭夫は、共有する不動産を平成二年一二月に譲渡したものであるが、

第一  被告人前田昌計は、大川孝史と共謀の上、右譲渡に係る自己の所得税を免れようと企て、平成二年分の総所得金額が九六三万三八九一円、分離長期譲渡所得金額が三億二三二六万〇六六六円で、これに対する所得税額が八〇一八万八四〇〇円であるのに、架空譲渡費用を計上するなどの不正の行為により所得の一部を秘匿した上、平成三年三月一四日和歌山県那賀郡粉河町大字粉河一五一四番地の四所在の所轄粉河税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が九六三万三八九一円、分離長期譲渡所得金額が一億五三〇四万二九二六円で、これに対する所得税額が三七六三万三九〇〇円(但し、申告書は誤って三七六三万一三〇〇円と記載。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税四二五五万四五〇〇円を免れ、

第二  被告人横手昭夫及び同前田昌計は、大川孝史と共謀の上、前記不動産譲渡に係る被告人横手昭夫の所得税を免れようと企て、平成二年分の総所得金額が四〇万三九〇〇円、分離長期譲渡所得金額が三億二七三一万八〇〇〇円で、これに対する所得税額が七九七五万八二〇〇円であるのに、架空譲渡費用を計上するなどの不正の行為により所得の一部を秘匿した上、平成三年三月一四日前記所轄粉河税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が四〇万三九〇〇円、分離長期譲渡所得金額が一億五七一〇万〇二六〇円で、これに対する所得税額が三七二八万〇三〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税四二四七万七九〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人両名の当公判廷における各供述

一  被告人前田昌計の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書六通(検甲九ないし一四号)

一  西村欽司、西好美及び川島安雄の大蔵事務官に対する各供述調書

一  大川孝史の検察官に対する供述調書四通(いずれも謄本)

判示第一の事実について

一  検察事務官作成の捜査報告書(検甲二号)

一  大蔵事務官作成の証明書(検甲三号)、捜査報告書(検甲四号)

判示第二の事実について

一  被告人横手昭夫の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(検甲六号)

一  大蔵事務官作成の証明書(検甲七号)、捜査報告書(検甲八号)

(法令の適用)

一  被告人前田昌計について

被告人前田昌計の判示第一及び第二の各所為は、いずれも刑法六〇条、所得税法二三八条一項(判示第二の所為については更に刑法六五条一項)に該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により所得税法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人前田昌計を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間右被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

二  被告人横手昭夫について

被告人横手昭夫の判示第二の所為は、刑法六〇条、所得税法二三八条一項に該当するところ、所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、情状により同法二三八条二項を適用し、その刑期及び金額の範囲内で被告人横手昭夫を懲役八月及び罰金一〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間右被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 荒木弘之)

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